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自主的な取り組みで意識改革
全国制覇を目指す藤枝明誠サッカー部

無断転載禁止 自主的な取り組みで意識改革<br>全国制覇を目指す藤枝明誠サッカー部
取材・文/池田敏明
写真/野口岳彦

長短のパスを繋ぐ「楽しいサッカー」で急成長を遂げ、注目を集める藤枝明誠高校。
チームを率いる松本安司監督の考え方やチームの取り組みを取材した。

パスサッカーで注目度アップ

「サッカー王国」として知られる静岡県の中でも、藤枝市は特にサッカーが盛んな地域で、これまでに数多くのJリーガーや海外で活躍する選手を輩出してきた。藤枝明誠高校は、そんな静岡県藤枝市にある私立高校だ。2009年度に第88回全国高等学校サッカー選手権大会に初出場してベスト8に進出し、2016年度の高円宮杯U-18サッカーリーグではプリンスリーグ東海に所属するなど、近年の躍進で少しずつ注目度が高まっている。2010年に完成した人工芝グラウンドでは現在、総勢144名の部員たちがトレーニングに励んでおり、多くの選手が「全国制覇」を目標に掲げている。

藤枝明誠高校
人工芝グラウンドで練習に励む藤枝明誠の選手たち。横断幕には「全国制覇」の文字も

チームとして志向するのは、人数をかけて細かくパスを繋ぎ、敵陣を切り崩す攻撃的なスタイルだ。「中学生の時に試合を見て、藤枝明誠の選手たちが楽しそうにサッカーをしていたのでここに来ました。自分も今、やっていてすごく楽しいです」という2年生MF田口滉太の声に象徴されるように、選手たちはみな「藤枝明誠でサッカーがしたい」とこの学校の門を叩き、「楽しいサッカー」を追求している。

藤枝明誠高校
「楽しいサッカー」を志向。トレーニングに励む選手たちの表情も明るく、楽しそうにサッカーに取り組んでいる
松本安司監督
「極力、何も言わないようにしている」と、語る松本監督は、選手たちの自主性を伸ばす指導を心掛けている

その「楽しさ」を作り出している要因の一つに、選手たちの自主性を何よりも重んじる松本安司監督の指導が挙げられる。「うちは1時間15分しか全体練習をしません。こちらから強制的にやらせるのではなく、自分たちで考えて、必要だと思ったことを自主的に、意識しながらやることが大切だと思っていますので、極力、何も言わないようにしています。強制的にやらせるのは、高校生にとってはいいことではありませんから」

チームとして行うトレーニングはわずか1時間15分。朝練や居残り練習、ジムトレーニングは、文字通り「自主練」として選手たちが自分たちで考え、必要だと思うものを行っている。普段からそれを徹底しているからこそ、試合では「やらされるサッカー」ではなく「自分たちで考えるサッカー」を実践できるし、困難に直面しても自力で解決できる。それが「楽しさ」に繋がっているのだ。

強化に向けた様々な取り組み

ただ、全国を視野に入れて戦うには、各自の努力だけでは補いきれない部分もある。強い相手と対峙しながら体力や判断力を90分間、持続させなければならず、もちろんパワー系の相手に対応するための体幹の強さも求められる。一方で、藤枝明誠の選手たちはやや細身の選手が多い。

「私が高校生の頃はご飯をたくさん食べましたけど、今の子どもたちはそこまで食べないですよね。だからカラダが大きくならないし、ケガもしやすい。そこでベーカリーショップを営む知人から毎日パンを無償で提供していただき、練習が終わった後に選手たちに食べさせるようにしています」(松本監督)

練習後30分以内の時間帯は“ゴールデンタイム”と呼ばれ、この時間帯に「たんぱく質」と「糖質」を補給することで、速やかなリカバリーができ、翌日も元気にがんばれる。練習後すぐに食事を摂るのが難しい選手たちにとって、すぐにパンを食べられるのは嬉しいシステムだ。また、希望者を募って地元のスポーツショップでプロテインをまとめ買いし、カラダづくりに役立てる取り組みも実施している。ただ、こうした栄養補給に対する意識には個人差があり、チーム全体の底上げにうまく直結できていない点が実情としてあった。

SAVASの栄養セミナー
栄養セミナーを通じ、カラダづくりの大切さを学ぶ

そこで、多くのアスリートの栄養サポートで実績を持つ株式会社 明治に協力を依頼し、選手への栄養セミナーを定期的に実施した。その内容に関心を示した数名の選手は、栄養士の指導を受けながら食事の改善にも取り組んだ。U-16静岡県選抜メンバーにも名を連ねる2年生MF上戸雅也は、この取り組みについて次のように語っている。

「以前は食事を重視していませんでした。出されたものしか食べなかったですし、自分が飲みたいものを飲んでいました。取り組みを始めてからは食べる量を増やすようにし、栄養士の先生から『乳製品と野菜が不足している』と指導していただいたので、100%オレンジジュースや牛乳を買って飲むようになりました。以前は試合中に相手に当たられると転んでしまうことが多かったんですが、取り組みを続けるうちに踏ん張れるようになりましたし、ドリブルのキレも良くなりました。他の選手の保護者の方からも『体が大きくなったんじゃない?』と言われるようになりました」

上戸選手
栄養士の指導を受けつつ食事の改善に取り組んだ上戸選手(左)。カラダつきやプレーに変化が現れたという

食事の変化「栄養フルコース型」の食事実施状況(1週間21食中)

上戸
雅也
選手
  ①主食 ②おかず ③野菜 ④果物 ⑤乳製品 補食 プロテイン摂取
2015年
10月
21回 20回 11回 6回 7回 おにぎり・パン 取り組み前:1日1回
2016年
3月
21回 21回 19回 14回 14回 パン(おにぎり) 現在:1日2回
小林
志光
選手
  ①主食 ②おかず ③野菜 ④果物 ⑤乳製品 補食 プロテイン摂取
2015年
10月
21回 21回 13回 7回 12回 おにぎり・パン 取り組み前:飲用なし
2016年
3月
21回 21回 21回 21回 16回 おにぎり・パン 現在:1日2回
田口
滉太
選手
  ①主食 ②おかず ③野菜 ④果物 ⑤乳製品 補食 プロテイン摂取
2015年
10月
21回 18回 15回 13回 15回 おにぎり・パン 取り組み前:飲用なし
2016年
3月
21回 16回 19回 17回 21回 おにぎり・パン 現在:1日2回
村柗
志苑
選手
  ①主食 ②おかず ③野菜 ④果物 ⑤乳製品 補食 プロテイン摂取
2015年
10月
21回 21回 21回 15回 12回 パン・ポテト 取り組み前:1日1回
2016年
3月
21回 21回 21回 18回 19回 おにぎり・パン 現在:1日2回
八木
祐大
選手
  ①主食 ②おかず ③野菜 ④果物 ⑤乳製品 補食 プロテイン摂取
2015年
10月
21回 21回 17回 16回 15回 グミ(2回) 取り組み前:1日1回
2016年
3月
21回 21回 17回 16回 21回 おにぎり・パン 現在:1日2回

取り組みに参加したのは、いずれも現在2年生のMF上戸雅也、MF小林志光、MF田口滉太、DF村柗志苑、MF八木祐大の5選手。最初に栄養士から指導を受け、食事実施状況のデータを採取したところ、始めた当初は野菜、果物、乳製品の摂取頻度が低かったことが分かる。意識が低いとどうしても主食とおかずが中心の食生活になりがちで、特に果物や乳製品は食事に含む回数が極端に低い傾向があった。野菜、果物、乳製品も含めた「栄養フルコース型」の食事を心がけ、不足がちだった果物や乳製品を摂取するために100%フルーツジュースや牛乳を意識的に飲むようになったことにより、取り組み開始から6カ月後にはどの選手もバランスの良い食事が摂れるようになった。また、1日に2回、プロテインを飲むように指導したことにより、カラダづくりに必要な「たんぱく質」を十分に摂取できるようになった。

2015年10月~2016年3月 体格の変化

上戸雅也選手
体重3.1㎏増
除脂肪体重1.6㎏増
  身長 体重 除脂肪体重
2015年
10月
161cm 50.2kg +1.6kg
2016年
3月
162.5cm 53.3kg
小林志光選手
体重3.5㎏増
除脂肪体重2.6㎏増
  身長 体重 除脂肪体重
2015年
10月
170.1cm 53.4kg +2.6kg
2016年
3月
170.0cm 56.9kg
田口滉太選手
体重3.6㎏増
除脂肪体重2.7㎏増
  身長 体重 除脂肪体重
2015年
10月
166.1cm 55.7kg +2.7kg
2016年
3月
166.6cm 59.3kg
村柗志苑選手
体重2.2㎏増
除脂肪体重1.6㎏増
  身長 体重 除脂肪体重
2015年
10月
173.0cm 62.0kg +1.6kg
2016年
3月
173.5cm 64.2kg
八木祐大選手
体重2.5㎏増
除脂肪体重2.1㎏増
  身長 体重 除脂肪体重
2015年
10月
167.8cm 58.8kg +2.1kg
2016年
3月
168.2cm 61.3kg

6カ月間の取り組みによって、5選手の体格も変化している。どの選手も体重が大幅に増えているが、注目すべきは除脂肪体重の増加量(kg)だ。除脂肪体重とは、文字どおり全体重から脂肪組織の重量を差し引いたもので、一般的には筋肉や内臓器官、骨などの重量を指す。体重増加量のうち、除脂肪体重の数値が高ければ、「太った」のではなく、筋肉や骨などの量が増えて「カラダが大きくなった」ことを意味しており、5選手ともその傾向がある。

高校生年代はまだまだ食事に対する意識が低く、自分の好きなものばかりを食べてしまいがちになる。しかしカラダづくりのためには、主食、おかず、野菜、果物、乳製品の5つがそろった「栄養フルコース型」の食事を摂るよう意識することが大切だ。また、成長期にあるアスリートの場合、1日3食の食事だけでは十分な量の栄養素を確保することが難しいため、練習前後におにぎりやパンなど補食を摂ったり、プロテインを活用したりすることも効果的だ。

継続は力。さらに楽しいサッカーを

このような取り組みにおいて何より難しいのは「継続させること」だが、普段からピッチ内外で自主的に行動することが多い藤枝明誠の選手たちは、今の自分たちに何が必要かをしっかり考え、継続的に取り組んだという。松本監督も、選手たちの成長に目を細めている。

「以前はレギュラーになれるかどうか、という選手だったのが、今じゃ“核”ですよ。不動の選手。いないとチームが回らなくなって困ります(笑)。また、試合の前に時間を逆算して軽食を摂ったり、試合後に100%オレンジジュースを飲んだりというのを、自分たちでやるようになりました。自分たちで考えながら取り組んで、少しずつ成果が出たことは本当に素晴らしいですね。何でもやれば成果が出る。そのような信念を持ってやり続けることが大事だと思います。子どもたちがそういった意識を持ってやってくれれば、日本のサッカー界はもっと良くなるのではないでしょうか」

何事も選手たちが考え、自分たちで判断しながら取り組む藤枝明誠高校サッカー部。カラダづくりにも真剣に取り組んで“強さ”を手に入れた彼らは、「楽しいサッカー」をさらに追及し、目標である全国制覇を目指し続けるはずだ。

次回は栄養セミナーレポートを掲載予定!!

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